なぜ今月これほど多いのか、答えが出た。攻撃側がAIを使っていた

調査会社が攻撃元のインフラを調べたら、AIの自律型侵入テストが使われていました。狙われた業種の並びが、今月書いてきた記事と重なります。

この記事の結論

  1. 攻撃元からAIの自律型侵入テスト「ARTEX」が確認された
  2. 日本企業約20社が標的。同じ作りの攻撃インフラが別に6台
  3. 原因は「誰でも攻撃できるようになった」ではない。熟練者が隙を突いている
  • 攻撃元からAIの自律型侵入テスト「ARTEX」が確認された
  • 日本企業約20社が標的。同じ作りの攻撃インフラが別に6台
  • 原因は「誰でも攻撃できるようになった」ではない。熟練者が隙を突いている

今月、このサイトで漏えいや停止の記事を20本以上書いた。なぜこんなに多いのかと思っていた。

GMOサイバーセキュリティ byイエラエが、攻撃元のインフラを調べた結果を公開していた。読んだら、説明がついた。

確認されたこと

ブログの書き出しはこうだ。

日本企業を狙った侵害事案において攻撃元インフラを調査したところ、AIによる自律型ペネトレーションテストシステムであるARTEXが使われていることを確認いたしました。

ペネトレーションテストは侵入テストのことだ。本来は、守る側が自分のシステムに攻撃を試して弱点を探すために使う。

それが攻撃に使われていた。

前の記事では「ログからAIによる攻撃の可能性が高い」と推定していた段階だった。今回それが裏付けられた形になる。

規模と狙い

  • その攻撃元からはほぼ日本だけを狙っていた
  • 日本企業 約20社が標的。うち9社は同業種のサイト
  • 同じように日本企業ばかり狙うAIの攻撃インフラを別に6台発見
  • 標的のうち8社が2026年9〜10月に漏えいを公表済み

そして同一の攻撃グループによる犯行だとされている。情報は法執行機関に共有済みだ。

韓国でも、2026年9月下旬から金融機関を狙った攻撃にARTEXが使われたとCrowdStrikeが報じている。国と業種を絞ったキャンペーンという見立てだ。

狙われた業種が、書いてきた記事と重なる

発見された6台の攻撃インフラが、主に狙っていた業種が公開されている。

インフラ主な標的の業種
1デジタルギフト・小売り流通
2教育・ギフト・印刷
3ポイントギフト・マーケティング
4保険・金融
5EC・メディア・物流
6EC

今月このサイトで書いた相手を思い出すと、EC、メディア、物流、小売りが並ぶ。重なって見える。

ただし個々の事案との関係は公表されていない。並びが似ているというだけで、結びつけることはできない。そこは分けて考える。

SPONSORED

なぜ防げなかったのか

同じ著者が5日前に書いた記事のほうが、実務には効く。基本的な対策の落とし穴を3つ挙げている。

1. CVEに載っていない穴がある

脆弱性の情報には対象のバージョンが書かれる。だからみんな、自分の使っているバージョンが該当するかを見る。

ここが盲点になる。

  • サポートが終わったバージョンは、そもそも調べられない。パッチも情報も出ない
  • サポート内でも攻撃コードを少し変えれば、別のバージョンに効くことがある

記事ではこれを「シャドー脆弱性」と呼んでいる。そして、こう書かれている。

攻撃者はAIを駆使することで、膨大なCVE情報を元に、全てのバージョンのソースコードを辿り、簡単にシャドー脆弱性を探索することができます。

さらに踏み込んだ一文が続く。

AIによる自動化を前にすると、CVSSの優先度は関係ありません。やられるか、やられないか、のどちらかです。

2日前に脆弱性の公表が2.4倍になった話を書いた。あのとき「数が増えても優先度で絞ればいい」と考えていたが、その前提が崩されるという指摘になる。

2. 外から調べる側と、攻撃する側の条件が違う

資産を外から調べて把握する取り組み(ASM)が広まっている。ここにも非対称がある。

守る側攻撃する側
外から見るのでバージョンが分からないことがある気にしない
確定できないと強く要求できないとにかく打ち込む
サービスを止めない検査しかできない止まっても構わない

ここは読んでいていちばん納得した。守る側は壊せない。攻撃側は壊していい。条件が最初から違う。

3. WAFは研究されて回避されていた

今回の攻撃ではWAF(防御の壁)を迂回する手が複数使われていたという。

具体例が書かれている。

一つのIPアドレスから短時間で多数のリクエストが来た場合にはブロックするというWAFのルールがありますが、このルールをバイパスするために閾値ギリギリで別のIPアドレスに切り替えて攻撃を続けていました。合計で数百のIPアドレスを切り替えながら攻撃していたのです。

ルールを知ったうえで、その手前で止めている。これは総当たりではない。

「WAFを入れているからパッチは後回しでいい」と考えている人は要注意、と念を押されている。

いちばん大事な一文

「AIで誰でも攻撃できるようになった」という話に落としたくなる。だが著者の分析は違う。

AIの進化によって誰でも簡単に攻撃できるようになったことだけが被害が多発している理由ではなく、熟練の攻撃者が攻撃側と防御側のミスマッチを徹底的に分析して攻撃してきている。そのミスマッチを突くためにAIの特徴をフル活用している。

つまり素人が増えたのではなく、上手い人が速くなった。

速さが変わると、何が変わるか。今まで「そのうちやる」で済んでいたものが、間に合わなくなる。

前日の車検証閲覧アプリの件では、修正版が公表の39日前に出ていた。直ってから公表するという順番が守られていた。その順番が守れる前提が、崩れつつあるという話になる。

小さいサイトは何をするか

ここまで読むと手が止まるが、やることは変わらない。むしろ減る。

  1. 使っているものを古いまま置かない。優先度で選り分ける余裕が無いなら、全部上げる
  2. サポートが切れたものを使わない。情報すら出ないので、気づきようがない
  3. 公開しなくていいものを公開しない。管理画面、古いテスト用のページ、使っていないフォーム
  4. WAFを理由にパッチを遅らせない

3番目がいちばん効くと思う。攻撃対象になっていないものは、攻撃されない。

個人のサイトでやる範囲は最小限の5つにまとめてある。

利用者としてやること

同じグループが複数社を狙っているなら、複数社から自分の情報が出ている可能性がある。

だからパスワードの使い回しが、いつもより危ない。昨日漏れた組み合わせを順番に試す攻撃が始まった話を書いたが、材料が各所から集まっている状態になる。

書いていて思ったこと

今日1日で445万件と42万件の記事を書いた。1日でだ。

多すぎると思っていたが、背景に同じ原因があるなら、むしろ説明がつく。

そして調べて公開している人がいるから、こうして書ける。攻撃インフラを追って業種まで並べる仕事は、簡単ではないはずだ。

まとめ

  • 攻撃元からAIの自律型侵入テスト「ARTEX」が確認された
  • 日本企業約20社が標的。うち9社が同業種
  • 同種の攻撃インフラが別に6台。EC・小売り・金融などを分担
  • 標的のうち8社が9〜10月に漏えいを公表済み
  • 落とし穴はCVEに載らない穴、外から調べる限界、WAFの回避
  • IPは数百を切り替えてしきい値を避けていた
  • 著者の分析は「熟練者がAIで隙を突いている」。素人が増えた話ではない
  • 小さいサイトは古いものを置かない、公開しなくていいものを出さない
SPONSORED

出典

本記事は2026年10月20日時点の公表内容に基づく。個々の漏えい事案と本調査の関係は公表されていない。業種の並びが似ていることをもって特定の企業と結びつけることはできない。本記事は法的な助言ではない。

新しい記事が出たら、ブラウザの通知でお知らせします。

メールアドレスの登録は要りません。いつでも止められます。

AUTHOR

北海道のWEB屋

北海道を拠点に、Web業界14年・サポート実績1,000件以上。WordPressの復旧、サーバー移転、独自ドメインとメールの設定、PHP・JavaScriptの修正まで対応します。相談と見積もりは無料です。

SPONSORED

関連記事

RELATED