脆弱性の発見が2.4倍になった。数えてみたら2.28倍だった
会話型AIの普及以降、脆弱性の発見が急増していると報じられました。公開データベースで自分で数え直し、増えた意味を考えます。

この記事の結論
- 2025年に公開された脆弱性は4万8千件超(2021年比2.4倍)と報じられた
- 自分で数えたら2021年21,950件 → 2025年49,972件だった
- 増えたのは弱点ではなく、見つける速さ
- 2025年に公開された脆弱性は4万8千件超(2021年比2.4倍)と報じられた
- 自分で数えたら2021年21,950件 → 2025年49,972件だった
- 増えたのは弱点ではなく、見つける速さ
会話型AIが広まって以降、ITシステムの脆弱性の発見が急増している、と報じられた。元になっているのは米国の非営利団体MITREが管理している番号の集計になる。
数字が独り歩きしやすい話なので、自分で数え直した。
数えた結果
脆弱性にはCVEという識別番号が振られる。公開データベースの検索機能で、公開日の範囲を区切って件数を取った。
| 年 | 公開された件数 |
|---|---|
| 2021年 | 21,950件 |
| 2025年 | 49,972件 |
| 2.28倍 | |
報道の「2.4倍」「4万8千件超」とは少しずれるが、ほぼ同じ絵になる。数え方(どの時点の集計か、どのデータベースか)で差が出る程度の違いだ。
2026年も数えてみた。1月から6月までで37,126件。半年でこれなので、報じられている「記録的な速さ」は確かにそのとおりになる。
なぜ自分で数えたか
この手の数字は、どこかの時点のスナップショットであることが多い。後から追加登録されると増える。
確かめてみて分かったのは、多少ずれても結論は変わらないということだった。2.28倍でも2.4倍でも、倍以上に増えたという事実は動かない。
増えたのは弱点ではない
ここを取り違えると、話がおかしくなる。
CVEの件数は見つかって、番号が振られた数だ。存在する弱点の数ではない。
つまり2.28倍になったのは、
- 探す人が増えた
- 探す速さが上がった
- 見つけたものを登録する流れが整った
のいずれか、あるいは全部になる。ソフトウェアが急に2倍脆くなったわけではない。
それでも危険は増える
ただし「だから安心」とはならない。見つかって公開された瞬間から、その情報は守る側と攻める側の両方に渡るからだ。
そして攻める側のほうが速い。守る側は、自分が使っているものかを調べ、影響を確かめ、適用の計画を立て、止まる時間を調整する。攻める側は、公開された手順を試すだけになる。
さくらインターネットが新規受付を止めた件が、まさにその形だった。被害が出たからではなく、脆弱性が公開された段階で動いている。
AIが効いているのは、どの部分か
報道は「AI普及で」としているが、何がどう効いているのかは分けて考えたい。
| 工程 | AIが効くか |
|---|---|
| コードを読んで、怪しい箇所を挙げる | 効く。量をこなせる |
| 実際に動く形にして確かめる | 部分的に効く |
| 報告書にまとめて登録する | 効く |
| 直す | 効くが、最後は人が確認する |
要するに見つける側と、報告する側の手間が下がった。直す側の手間は、そこまで下がっていない。
入口が広がって、出口が同じ。だから詰まる。
使う側がやること
件数が増えたからといって、全部を追うことはできない。絞る基準を先に決めるしかない。
- 自分が何を使っているかを書き出す — 一覧が無いと、関係あるかどうかも分からない
- 公開されている側から触れるものを優先する — 社内だけのものは後回しでいい
- 影響が外に出るものを優先する — 箱の中で収まるかどうか
- 自動で当たる設定にしておく — 判断を挟まないほうが速い
1番目が抜けていると、残りが全部できない。「うちは関係あるのか」に即答できない状態が、いちばん時間を失う。
評価値の読み方はさくらの記事に書いた。数字そのものより、影響が箱の外に出るかどうかを見ると優先順位がつけやすい。
国からの要請も出ている
報道によれば、相次ぐ情報漏えいを受けて、10月9日に企業へ脆弱性対策の強化が要請されたとされている。
この秋の公表は、このサイトでも10日間で何社公表したのか以降ずっと追ってきた。件数の増加と、実際の被害の増加が同じ時期に来ている。
まとめ
- 2025年の公開件数は約5万件。2021年の約2.2万件から2.28倍(自分で数えた値)
- 2026年は1〜6月で37,126件。半年で前年の7割を超えている
- 増えたのは見つかった数であって、存在する弱点の数ではない
- それでも危険は増える。公開された瞬間に、両側へ情報が渡る
- AIが効いているのは見つける工程と報告する工程。直す工程は変わっていない
- 使う側は自分が何を使っているかの一覧から始める
出典
- 脆弱性の発見が急増しているという報道と「2.4倍」「4万8千件超」という数、10月9日の要請については、共同通信(2026年10月17日配信)による
- NVD(米国国立標準技術研究所の脆弱性データベース)(本記事の件数は、同データベースの公開APIで公開日の範囲を区切って集計したもの。2026年10月18日に取得)
本記事の件数は筆者が取得時点で数えたもので、後からの登録により増える可能性がある。報道の数値と差があるのは、集計時点とデータベースの違いによる。本記事は法的な助言ではない。
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