漏れたのは「誰が誰の担当か」。エムスリー「MR君」の2万8千人分、メールアドレスはごく一部だった
エムスリーの製薬企業向けサービス「MR君」への不正アクセスで、医師など2万5,775人と製薬企業の担当者2,260人の情報が漏えいしました。メールアドレスを含むのは一部だけで、中心は氏名・勤務先と担当関係です。

この記事の結論
- エムスリーの製薬企業向けサービス「MR君」への不正アクセスで、m3.com会員等25,775人と製薬企業の担当者2,260人の情報が漏えい
- メールアドレスを含むのは会員側6人、担当者側264人だけ。中心は氏名・勤務先と「担当関係」
- 気をつけたいのはメールより、製薬会社の担当者を名乗る電話や連絡だ
- エムスリーの製薬企業向けサービス「MR君」への不正アクセスで、m3.com会員等25,775人と製薬企業の担当者2,260人の情報が漏えい
- メールアドレスを含むのは会員側6人、担当者側264人だけ。中心は氏名・勤務先と「担当関係」
- 気をつけたいのはメールより、製薬会社の担当者を名乗る電話や連絡だ
医療従事者向けサイト「m3.com」を運営するエムスリーが10月23日、製薬企業向けサービス「MR君」への不正アクセスについて第2報を出した。漏えいした人数と中身が分かった。
MRは医薬情報担当者、つまり製薬会社の営業担当のことだ。MR君は、製薬企業が医師に薬の情報を届けるためのサービスになる。
数字だけ見ると「メールアドレスはほとんど漏れていない」と読める。だが、漏れた情報の組み合わせを見ると、気をつけるところは別にある。
公式が発表していること
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 10月14日 | MR君のシステムへの不正アクセスを確認。同日に漏えいを確認し、判明した経路を遮断 |
| 10月15日 | 第1報。対象は医師会員全体の1割未満と製薬企業の担当者数百名規模。人数は精査中 |
| 10月22日〜 | 対象の会員に、登録メールアドレスへ順次個別に連絡 |
| 10月23日 | 第2報。人数と項目を公表 |
漏えいした情報
| 対象 | 含まれるもの | 人数 |
|---|---|---|
| m3.com会員等 | 氏名、勤務先、一部の人のメールアドレス、当社サービスの利用に関する情報の一部、製薬企業が登録していた情報(担当関係等) | 25,775人 (メールアドレスを含むのは6人) |
| 製薬企業の担当者 | 氏名、勤務先、一部の人のメールアドレス等 | 2,260人 (メールアドレスを含むのは264人) |
- ログインパスワードと、m3ポイントは含まれない
- クレジットカード番号は、そもそも保持していない
- 会員だけでなく、製薬企業から預かっていた、m3.com会員ではない医師の情報も一部含まれる
- 公開されたり、不正に使われたりした事実は確認されていない
- 原因と侵入経路は、第2報でも明らかにしていない
メールアドレスより重いもの
会員側でメールアドレスを含むのは、2万5千人のうち6人だ。メールでの大量の詐欺は、この件だけではやりにくい。
代わりに漏れているのが「担当関係」だ。どの医師を、どの製薬会社の、どの担当者が受け持っているか。そこに氏名と勤務先がつく。
これは、なりすましにはとても使いやすい。
- 病院に電話して「○○製薬の△△です。□□先生の担当をしております」と名乗れる。担当者の名前は本物だ
- 逆に、製薬会社の担当者に医師や病院の名前で連絡することもできる
- 「担当が替わりました」「新しい資料のURLをお送りします」と言われると、疑う理由が見つからない
メールアドレスが無くても、電話、郵便、病院の代表アドレスなど、連絡の手段はほかにある。本物の関係を知っている相手ほど、信用されやすい。
ここまでは筆者の見方だが、エムスリーもメールだけでなくSMSや電話への注意を呼びかけている。
対象になりうる人がやること
医師・医療機関の人
- 担当者を名乗る連絡で、いつもと違うこと(担当の交代、連絡先の変更、URLを開いて資料を見てほしい、ログインしてほしい)を言われたら、その連絡に返さず、製薬会社の代表番号や前から知っている連絡先で確かめる
- パスワードや口座情報を聞かれたら、相手が誰でも答えない。エムスリーも、個別連絡でパスワード、クレジットカード情報、銀行口座情報などを求めることはないとしている
- 病院の窓口や事務の人にも、「担当者を名乗る電話が増えるかもしれない」と共有しておく
製薬企業の担当者
- 自分の名前を使ったなりすましが起きうると考えておく。担当先から「この前の連絡は本当にあなたか」と聞かれたら、それが手がかりになる
- エムスリーは対象の製薬企業に担当者から順次連絡している。自社の窓口と、対応を合わせておく
エムスリーからの連絡かどうか
会員への個別連絡は、10月22日以降、登録メールアドレスに届いている。届かない人は、第2報をもって連絡に代えるという。
この個別連絡を装う偽メールも考えられる。パスワードなどの入力を求めてきたら偽物だ。問い合わせはメールのリンクからではなく、m3.comを自分で開いて確かめるとよい。
同じ時期の、もう1つの件とは別物
エムスリーは10月21日にも、別の発表をしている。混同しないように整理しておく。
| MR君(今回) | Studio経由(10月21日) | |
|---|---|---|
| どこに不正アクセス | エムスリーのシステム | サイト作成に使っていた外部のクラウドサービス「Studio」 |
| 確度 | 漏えいを確認 | 漏えいの可能性 |
| 対象 | 会員等25,775人、担当者2,260人 | 「M3PSP」サイトのフォーム271人、「1人1円ファンド」サイトのフォーム127人 |
| 原因 | 未公表 | Studioへの不正アクセス。エムスリーのシステムへの不正アクセスは確認されていない |
Studioの件は、このサイトでも暗号化していたデータも読まれた理由や、利用者が自分で鍵を替えるしかなかった件を書いてきた。同じ会社の名前が2回出てきたが、原因も確度も別だ。
発表の「確認」と「可能性」の違いについては、「漏えいしたおそれ」は何を意味しているのかにまとめている。
まとめ
- MR君への不正アクセスで、会員等25,775人と担当者2,260人の情報が漏えい
- メールアドレスを含むのは6人と264人。パスワードとm3ポイントは含まれない
- 重いのは氏名・勤務先と「誰が誰の担当か」の組み合わせ。担当者を名乗る電話や連絡に注意
- いつもと違う依頼は、前から知っている連絡先で確かめる
- 原因と侵入経路は未公表。10月21日のStudio経由の件とは別
出典
- エムスリー「不正アクセスによる個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ(第2報)」(2026年10月23日。人数、項目、個別連絡、注意喚起)
- エムスリー「不正アクセスによる個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ」(2026年10月15日。第1報)
- エムスリー「当社が利用するクラウドサービス(Studio)への不正アクセスに伴う(略)個人情報漏えいの可能性に関するお詫びとお知らせ」(2026年10月21日)
- ビジネス+IT「エムスリー『MR君』に不正アクセス、会員等25,775名と製薬担当者2,260名の情報漏えい」(2026年10月24日配信)
本記事は2026年10月24日時点の公式発表に基づく。「メールアドレスより重いもの」の節のうち、なりすましの例は筆者の見方である。原因や影響範囲は今後の発表で変わる可能性がある。
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