Linuxに深刻度9.8の脆弱性。AnthropicのAIが53分で遠隔からrootを取った。UbuntuとRHELはまだ修正待ち
LinuxカーネルのIPv4のTCPの処理に、深刻度9.8の脆弱性(CVE-2026-98432)が見つかりました。Anthropicは、未公開の研究用モデルが、MPTCPを待ち受けるサーバーで認証なしにroot権限を取る攻撃を約53分で作ったと発表しています。DebianやAlmaLinuxは修正を出し始めましたが、UbuntuとRed Hat Enterprise Linuxは10月30日時点で修正版がありません。レンタルサーバーとVPSの利用者が、それぞれ何をすればいいかをまとめます。

この記事の結論
- LinuxカーネルのIPv4のTCPの接続処理に、解放済みのメモリを使ってしまう不具合(use-after-free)が見つかった。CVE-2026-98432、深刻度は10点中9.8。カーネル4.4から入っていた
- Anthropicは10月27日、未公開の研究用のClaudeが、MPTCPを待ち受けるLinuxサーバーに対し、認証なしで遠隔からroot権限でコマンドを実行する攻撃を約53分で作ったと発表した。攻撃のコードは公開していない
- Debianは修正済み、AlmaLinuxはテスト版を公開。一方、UbuntuとRed Hat Enterprise Linux(RHEL)は10月30日時点で修正版のカーネルがない。VPSや自社サーバーを持つ人は、修正が出るまでの手当てが要る
- LinuxカーネルのIPv4のTCPの接続処理に、解放済みのメモリを使ってしまう不具合(use-after-free)が見つかった。CVE-2026-98432、深刻度は10点中9.8。カーネル4.4から入っていた
- Anthropicは10月27日、未公開の研究用のClaudeが、MPTCPを待ち受けるLinuxサーバーに対し、認証なしで遠隔からroot権限でコマンドを実行する攻撃を約53分で作ったと発表した。攻撃のコードは公開していない
- Debianは修正済み、AlmaLinuxはテスト版を公開。一方、UbuntuとRed Hat Enterprise Linux(RHEL)は10月30日時点で修正版のカーネルがない。VPSや自社サーバーを持つ人は、修正が出るまでの手当てが要る
何が見つかったのか
Linuxカーネルの脆弱性を管理するCVEチームは、10月15日にこの不具合を公表した。説明によると、TCPの接続を確立する途中で、別のCPUが同じ接続の再送を同時に処理すると、すでに解放したメモリ(IPのオプションの情報)を読んでしまうことがある。修正は、解放のしかたを安全な方法に改めるものだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 番号 | CVE-2026-98432 |
| 深刻度 | CVSS 3.1で9.8。ネットワーク経由、認証不要、利用者の操作不要 |
| 場所 | IPv4のTCPの接続処理(IPのオプションの扱い) |
| 影響する版 | カーネル4.4以降 |
| 修正された版 | 6.12.113、6.18.56、7.2.10、7.3-rc7 |
| IPv6 | 一つ目の問題は影響なし。別の経路の問題は別の修正で対応予定 |
Anthropicが示したこと
Anthropicの発表によると、未公開の研究用のClaudeは、カーネルのアドレスを漏らすまでに約48分、そこからroot権限でのコマンド実行まで約5分、合わせて約53分で攻撃を組み立てた。対象は、複数の通信経路を束ねるMPTCP(マルチパスTCP)を待ち受けるサーバーで、パケットを送るだけで、認証も利用者の操作もなくrootでコマンドを実行できたという。
攻撃のコードは公開されていない。発表は、OpenBSDやFreeBSDの権限昇格、サンドボックスからの抜け出し、Webアプリケーションの脆弱性など、ほかの発見もあわせて紹介している。
読み違えないための注意
ここからは筆者の見方だ。この件は「Linuxのサーバーがすべて、外から一発で乗っ取られる」という話ではない。
- Anthropicが示した攻撃の前提はMPTCPの待ち受けだ。MPTCPを使わないふつうのWebサーバーで、同じようにrootまで取れるかは示されていない
- 一方で、不具合そのものはふつうのIPv4のTCPの処理にある。ほかの経路で悪用する方法が今後見つかる可能性は否定できない
- 攻撃のコードは公開されていないが、修正の中身は公開されている。修正を手がかりに攻撃を作り直すことは、PHP2Shellのときと同じく、AIで速くなっている
「すぐに全部が危ない」でも「MPTCPを使っていないから関係ない」でもなく、修正版が出たらすぐ入れる、出るまでは手当てをしておく、が妥当なところだ。
ディストリビューションごとの状況(10月30日〜31日に確認)
| ディストリビューション | 状況 | 確認した場所 |
|---|---|---|
| Debian | 12(bookworm)、13(trixie)とも、セキュリティ更新で修正済み | Debianのセキュリティトラッカー |
| Ubuntu | 22.04、24.04、26.04、26.10は「修正作業中」。20.04、18.04、16.04は「脆弱」 | UbuntuのCVEのページ(10月30日更新) |
| RHEL | 8、9、10が影響あり。修正版のカーネルはまだない。緩和の手順を公開 | Red HatのCVEのページ |
| AlmaLinux | 8、9、10の修正版カーネルをテスト用のリポジトリで先に公開 | AlmaLinuxのブログ(10月30日) |
使っているサーバーごとにやること
共用のレンタルサーバー
カーネルを管理しているのはサーバー会社で、利用者はカーネルを触れない。利用者の側でできるのは、サーバー会社のお知らせを見て、メンテナンスや再起動の予定を確かめることくらいだ。自分のサイトでやることは、ふだんどおりのWordPressやPHPの更新である。
VPS、クラウド、自社サーバー
- OSと版を確かめる。Debianなら、セキュリティ更新でカーネルを上げ、再起動する。カーネルの更新は、再起動するまで効かない
- MPTCPを使っていなければ止める。AlmaLinuxは、sysctlで net.mptcp.enabled = 0 にする手順を案内している。Anthropicが示した経路はこれでふさがる
- IPv4のオプション付きのTCPパケットを落とす。不具合のきっかけはIPのオプションなので、AlmaLinuxはnftablesでこれを捨てるルールを案内している。ふつうの通信でIPのオプションを使うことはまれだが、入れる前に自分の環境で影響を確かめる
- UbuntuやRHELは、修正版のカーネルが出たらすぐ入れて再起動できるよう、作業の時間を先に決めておく
- クラウドのファイアウォール(セキュリティグループ)で、外から受けるポートを必要なものだけにしておく。これは今回に限らない基本だ
AIが脆弱性を見つけ、攻撃まで作る時代
これも筆者の見方だ。今月は、AIが見つけたPHPの脆弱性(PHP2Shell)があり、今回はAIがカーネルの不具合から遠隔のrootまでを1時間かからずに組み立てた。見つける側も守る側も、同じ道具を手にしている。
差がつくのは、修正が出てから入れるまでの時間だ。カーネルは再起動が要るので、Webアプリケーションの更新より後回しにされやすい。再起動できる時間帯を、ふだんから決めておきたい。
まとめ
- LinuxカーネルのIPv4のTCPの処理にCVE-2026-98432(9.8)。カーネル4.4以降が対象
- AnthropicのAIが、MPTCPの待ち受けに対して遠隔からrootを取る攻撃を約53分で作った。コードは非公開
- Debianは修正済み、AlmaLinuxはテスト版。UbuntuとRHELは修正待ち
- VPSなどは、MPTCPを止める、IPのオプション付きのパケットを落とす、修正が出たら更新して再起動。共用のレンタルサーバーはサーバー会社のお知らせを確かめる
出典
- Linux kernel CVE team「CVE-2026-98432: ipv4: free inet_opt and ireq_opt after an RCU grace period」(linux-cve-announce、2026年10月15日)
- Anthropic「Discovering and exploiting vulnerabilities in critical, real-world software with Claude」(2026年10月27日)
- Ubuntu「CVE-2026-98432」(2026年10月30日更新)
- Debian Security Tracker「CVE-2026-98432」(2026年10月31日に確認)
- Red Hat「CVE-2026-98432」(2026年10月31日に確認)
- AlmaLinux「CVE-2026-98432: Patched kernels available in testing」(2026年10月30日)
- ASCII.jp「Linuxに深刻度9.8の脆弱性、認証なしでroot権限奪取 AnthropicのAIが攻撃を実証」(2026年10月30日)
本記事は2026年10月31日時点の情報に基づく。各ディストリビューションの状況は変わるので、使っているOSの最新の情報を確かめてほしい。「読み違えないための注意」と「AIが脆弱性を見つけ、攻撃まで作る時代」は筆者の見方である。
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