AIが攻撃を「自走」させる時代。ARTEXが変えたのは手口ではなく、速さだった

目的を伝えるだけで侵入まで自動で進めるAIツール「ARTEX」が、国家と連携する攻撃者にも使われていました。Microsoftによると、標的を決めてから管理者級の権限を得るまで3時間かからない例もありました。

この記事の結論

  1. 目的と対象を伝えるだけで、偵察から侵入まで自動で進めるAIツール「ARTEX」が、実際の攻撃に使われていた
  2. Microsoftによると、中国政府と連携する攻撃者が使い、標的を決めてから管理者級の権限を得るまで3時間かからない例が複数あった
  3. AIが新しい手口を発明したわけではない。昔からの手口を、休まず機械の速さで回している。だから守りは「基本を、速く」
  • 目的と対象を伝えるだけで、偵察から侵入まで自動で進めるAIツール「ARTEX」が、実際の攻撃に使われていた
  • Microsoftによると、中国政府と連携する攻撃者が使い、標的を決めてから管理者級の権限を得るまで3時間かからない例が複数あった
  • AIが新しい手口を発明したわけではない。昔からの手口を、休まず機械の速さで回している。だから守りは「基本を、速く」

情報漏えいのニュースで、最近よく名前が出るAIツールがある。「ARTEX」だ。

もとは、GitHubで公開されていた自律型の侵入テスト(ペネトレーションテスト)ツールだ。侵入テストは、本来は自社のシステムの弱いところを、許可を得て攻撃側の目線で調べる作業になる。

それが、攻撃者に使われている。Microsoftが10月21日に詳しい分析を出し、韓国のセキュリティ会社AhnLabも検証結果を公表した。一次情報をもとに、何が変わったのかを整理する。

ARTEXは何をするツールか

Microsoftの説明では、ARTEXはどのAIモデルでも動かせる侵入テストの枠組みで、複数のAIエージェントが役割を分けて動く。表示は英語のほか、韓国語・中国語・スペイン語・日本語に切り替えられる。

AhnLabの分析では、エージェントは大きく3つに分かれる。

  • Goals:目的を整理する
  • Planner:次に何をするかを決める
  • Worker:実際に道具を動かす

Workerの結果を見てPlannerが次の手を決める。決められた手順を繰り返すのではなく、結果を見て進み方を変えるのが特徴だ。

「侵入してください」だけで進んだ

AhnLabは、隔離した検証環境でARTEXを試した。伝えたのは対象と目的と許可範囲だけで、どんなサービスが動いているか、どんな弱点があるかは教えていない。

  • ファイルをアップロードできる弱点のあるWebサーバーでは、そこからプログラムを動かすところまで自力で進んだ
  • 別の環境では、最初の侵入のあと内部の4台のサーバーでコマンドを実行した

AhnLabは「AIによる自律型の侵入ツールは、すでに現実の脅威になっている」としている。

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実際の攻撃で何が起きたか

Microsoftの分析は、中国政府と連携する攻撃者「Storm-0940」についてだ。2021年から活動しており、データを盗むことを目的にしている。

  • 2026年9月の時点で、ARTEXを使って世界の数百の組織への攻撃を自動化していた
  • 対象は航空宇宙・防衛、金融、政府、法律、製造、半導体、ソフトウェアなど幅広い
  • 標的を決めてから、クラウドの管理者級の権限を得るまで3時間かからなかった例が複数あった

パスワードの総当たりを、1分に2,900回

10月10日から14日にかけて、Storm-0940の基盤からは、8つの組織の327のアカウントに対してパスワードを片っ端から試す攻撃(パスワードスプレー)が行われた。

失敗したログインは15万1,000回以上。いちばん多い11日には1分あたり2,900回に達した。ただ、この攻撃ではログインの成功は確認されなかった。ほぼすべてがアカウントのロックで止まっている。

本命は「信頼された連携アプリ」だった

Microsoftは、Storm-0940が、クラウドバックアップのサービスを提供するConnectWiseの侵害にも関わったと見ている。

流れはこうだ。

  1. ConnectWiseのクラウドのアプリの認証情報が奪われた
  2. そのアプリは、多くの企業のMicrosoft 365に「連携アプリ」としてすでに許可されていた
  3. 攻撃者のAIエージェントは、その認証情報を使って2,250以上の組織への入り込みを試みた
  4. 一部の組織では、ディレクトリの調査、アプリの認証情報の書き換え、権限の付け替えまで進んだ

人がログインする必要がない。すでに信頼されているアプリの顔をして入ってくる。そして書き換えられた認証情報は、元のアプリを止めたあとも裏口として残ることがある。

Microsoftは、これは同社のシステムや製品の弱点によるものではないとしている。また、アプリが使われていたり認証が成功していたりしても、それだけでデータが盗まれたとは限らないとも書いている。

消しても、コピーが増える

ITmediaの報道によると、ARTEXの作者は10月8日付の声明で、学術研究のために作ったもので一連の攻撃とは無関係だとし、更新と公開をやめた。

だがAhnLabは、元のリポジトリが消えたあとも、そのコードをもとにした改変版が名前を変えて出回っていると報告している。「ARTEXは単一のプロジェクトではなく、複数の運用者が再利用、改変、再配布している」という。

AhnLabは、ARTEXを動かしているとみられる公開のIPアドレスを600特定した(10月14日時点では約900)。米国・中国・香港・シンガポールで9割を占めたが、国からは運用者の国籍や攻撃の出どころは決められない、とも断っている。

改変版の一つでは、Magento(Adobe Commerce)の既知の脆弱性を狙い、公開されている検証用のコードと同じ手順で攻撃した跡も見つかっている。

変わったのは、手口ではなく速さ

ここが大事なところだ。

パスワードの総当たり、公開済みの弱点を突く攻撃、連携アプリの悪用。どれも昔からある手口だ。ARTEXが新しい攻撃を発明したわけではない。

Microsoftはこう書いている。

エージェントは人間を縛る条件に縛られない。夜も週末も休日も働き、複数の侵入経路を同時に試せる。

警告は大量に出る。だが速すぎて、守る側が対応する時間がほとんどない。AhnLabも「攻撃者がAIを使っても、防御の基本原則は変わらない」としている。

つまり、守りの中身は変わらない。変わったのは、基本ができていないところが見つかるまでの時間だ。

中小の会社とサイトで、今やること

  1. 多要素認証を入れる。パスワードの総当たりは、AIでもっと速く、もっと広くなる。パスワードだけで入れる入口を減らす
  2. 使い回しのパスワードをなくす。過去に漏れたものは真っ先に試される。このサイトのパスワード漏えいチェックでも確かめられる
  3. 連携アプリを棚卸しする。Microsoft 365やGoogle Workspaceで、外部のアプリにどんな権限を与えているかを見る。使っていないものは外し、強すぎる権限は絞る
  4. 公開しているものを、すぐ更新する。WordPressのプラグイン、ECサイト、ファイルをアップロードできる機能。修正版が出ていたのに上げていなかった、が一番狙われる
  5. 管理画面を外にさらさない。公開する必要のない管理機能は、アクセスできる場所を絞る

Cloudflareの最高経営責任者が言った「同じような穴はまだ出てくる」と、今回の話は表と裏だ。見つける速さも、突く速さも上がっている。間に合わせるには、更新と見直しを「事件のたび」ではなく「いつも」やっておくしかない。

まとめ

  • ARTEXは、目的を伝えるだけで偵察から侵入まで自動で進めるAIの侵入テストツール
  • Microsoftによると、中国政府と連携する攻撃者が数百の組織に使い、3時間未満で管理者級の権限を得た例も
  • ConnectWiseの件では、信頼された連携アプリの認証情報で2,250以上の組織への入り込みを試みた
  • 作者は公開をやめたが、改変版が出回っている
  • 手口は昔からのもの。守りは多要素認証・使い回し禁止・連携アプリの棚卸し・すぐ更新
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出典

本記事は2026年10月25日時点の公表内容に基づく。攻撃に使われたIPアドレスや手順の細部は、悪用を避けるため載せていない。自社の環境が影響を受けたかの調査は、各サービスの提供元の案内に沿って行うこと。

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北海道のWEB屋

北海道を拠点に、Web業界14年・サポート実績1,000件以上。WordPressの復旧、サーバー移転、独自ドメインとメールの設定、PHP・JavaScriptの修正まで対応します。相談と見積もりは無料です。

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