補償する、要求には応じない、国に動いてほしい。FX用サーバー不正アクセスの第4報を読む
「お名前.com デスクトップクラウド」の第4報で、GMOは情報の持ち出しを認め、見舞金と損失の補償を発表しました。攻撃者から金銭を要求されていることも明かし、応じないとしています。

この記事の結論
- GMOはシステムにセキュリティ上の問題があり、情報が外へ持ち出されたことを認めた
- 全利用者に見舞金5,000円。不正な取引で実際に出た損失は補償する
- 攻撃者から金銭を要求されているが応じない。国に能動的サイバー防御の適用を求めた
【追記 10月24日夜】同日夜の第5報で、手元のパソコンのフルスキャンとバックアップが「至急」のお願いに上がりました。第5報の内容と、端末の確かめ方はこちら。
- GMOはシステムにセキュリティ上の問題があり、情報が外へ持ち出されたことを認めた
- 全利用者に見舞金5,000円。不正な取引で実際に出た損失は補償する
- 攻撃者から金銭を要求されているが応じない。国に能動的サイバー防御の適用を求めた
FXの自動売買用サーバー「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスについて、GMOインターネットグループとGMOインターネットが、10月24日11時50分時点の第4報を出した。
昨日の第3報までは、何が起きたかと利用者へのお願いが中心だった。第4報はお金の話と、攻撃者との対決に踏み込んでいる。前回の記事(パスワードを変えても、つながったまま)の続きとして整理する。
第3報から変わったこと
| 第3報(23日) | 第4報(24日) |
|---|---|
| ログイン情報が取得された「可能性」 | 情報が外部に持ち出された事実を確認 |
| 侵入経路は調査中 | システムにセキュリティ上の問題が存在した |
| 再開は未定 | 今のシステムはそのまま再開しない |
| 被害額は調査中 | 見舞金と、損失の補償を発表 |
| 攻撃者を名乗る連絡に注意 | 攻撃者とみられる者から金銭の要求を受けていると公表 |
いちばん大きいのは、自社の不備を認めたことだ。第4報は「当社の不備を真摯に認め」と書いている。
お金について
見舞金:全員に一律5,000円
今このサービスを使っている全員に、被害の有無にかかわらず5,000円を払う。下の損失の補償とは別だ。受け取り方は10月30日(金)までに、登録したメールアドレスに届く。
補償:実際に出た損失
不正アクセスが原因の、本人の意思によらない取引で出た損失を補償する。
| 対象になる | 対象にならない |
|---|---|
| 取引で確定した差損 | 相場の動きによる損失 |
| その取引の手数料など | 取引で得られたはずの利益 |
| そのほかの間接的な損害 |
報道されている被害は、数秒の売買を繰り返して取引のコストで残高を削られたというものだった。差損と手数料が対象に入っているので、この形の被害は補償の範囲に入ることになる。
流れはこうなる。
- GMOに、取引の日時・内容・損失額が分かる資料を出す(本人確認書類なども)
- 利用しているFX会社にも、不正アクセスによる取引だと説明して、取消しや返金を相談する
- FX会社から返金があれば、残りをGMOが払う。返金されなくても、対象の損失はGMOが払う
対象かどうかは、取引やアクセスの記録をもとにGMOが確認して個別に知らせる。申請の方法や期間は11月6日(金)までに案内される。
「閲覧専用パスワード」には気をつける
補償の手続きでは、GMOが取引履歴を直接確かめるため、MT4やMT5の「閲覧専用パスワード」を出すよう求めることがあるという。
閲覧専用パスワードは、取引履歴を見るだけで、売買はできないものだ。取引用のパスワードとは別にある。
GMOは、これ以外のパスワードや暗証番号を尋ねることはないとしている。逆に言えば、「補償のために閲覧専用パスワードを」という偽の連絡が出てくる余地がある。
- 手続きは11月6日までに公式サイトとメールで案内される。それより前の「申請はこちら」は疑う
- メールのリンクからではなく、公式サイトを自分で開いて確かめる
- 取引用のパスワードは、誰にも渡さない
代替サービス:6か月無償
不正アクセスを受けた今のシステムはそのまま再開しない。続けてWindowsのデスクトップ環境を使いたい人には、別の独立したクラウド基盤のサービスへの乗り換えを案内し、6か月は無償にする。
本人の同意なしに移すことはないとしている。乗り換えない人の契約や料金の扱いも、10月30日までにメールで知らせるという。
攻撃者の要求と、3つの脅し
第4報は、攻撃者とみられる者から金銭を要求されていることを明かした。応じなければ、次のことをすると言ってきているという。
- 国内外の70を超える証券会社・FX会社にある利用者の口座で、不正な注文を続けて残高を減らす
- このサービスと、サービスに接続した利用者のパソコンの情報を公開し、ランサムウェア攻撃を行う
- GMOのシステムや運用体制の情報を公開する
GMOの答えは「要求には応じない」。理由は、払っても情報の削除や悪用の防止が保証されないからだ。通信記録などの証拠は警察に出し、刑事事件として捜査を求めている。
あわせて、主なFX会社・証券会社にこのサービスからのアクセスの遮断と全セッションの強制切断を求めた。前回の記事で書いた「パスワードを変えても、つながったまま」の問題を、会社の側から一斉に閉じに行った形だ。
攻撃者が今後、情報と称するものを公開する可能性もある。GMOは事実と違う内容が混ざるおそれがあるとして、正式な情報は自社のページで出すとしている。
手元のパソコンも見ておく
2つ目の脅しには「接続した利用者のパソコン」が入っている。
第3報でGMOは、予防として自分のパソコンをウイルス対策ソフトでフルスキャンし、バックアップを取るよう求めていた。まだなら、やっておきたい。リモートデスクトップで手元のドライブやクリップボードをサーバー側と共有する設定にしていた人は、特に気にしておくとよい(ここは筆者の見方)。
「能動的サイバー防御」を国に求めた
第4報の最後には、GMOが政府の関係機関に「能動的サイバー防御の『発動第1号』」として対応を強く求めた、とある。
どういう制度か
2025年5月に成立したサイバー対処能力強化法と、その整備法でできた仕組みだ。条文を読むと、攻撃元を無力化する措置は警察が行う。
- 行うのは、警察庁が指名する「サイバー危害防止措置執行官」
- 条件は、放置すれば「人の生命、身体又は財産に対する重大な危害」が起きるおそれがあり、緊急の必要があるとき
- 攻撃に使われているコンピューターの管理者にデータの消去などを命じるか、自ら措置をとる
- 原則として、事前にサイバー通信情報監理委員会の承認が要る。国外の機器が相手なら外務大臣と協議する
条件に「財産」が入っている。だから、利用者の口座の残高が削られ続けている今回のような事案も、条文の上では対象になり得る。
ただし、決めるのは国
この措置は、企業が求めれば動くものではない。使うかどうかを判断するのは警察と委員会だ。「発動第1号」というのはGMO自身の位置づけで、政府が認めたものではない。
また、この法律は段階的に施行される。附則では、公布(2025年5月23日)から最長で2年6か月以内に、順に政令で定めるとされている。この措置が今の時点で使える状態かは、筆者は確認できていない。
政府がどう応じるかは、続報を待ちたい。
利用者がいまやること
- 第3報のお願いを済ませる。別の端末からパスワード変更、全セッションの切断、二段階認証、使い回しの解消
- 取引の記録を残す。補償の申請では、日時・内容・損失額が客観的に分かる資料が要る。FX会社の取引報告書や画面の記録を保存しておく
- FX会社に相談する。不正アクセスによる取引だと伝え、取消しや返金について聞く
- 10月30日と11月6日の案内を待つ。見舞金と代替サービスは30日まで、補償の申請方法は6日まで
- 攻撃者を名乗る連絡、補償を装う連絡には応じない
筆者の見方
今回の手口は、盗めない資産を壊して、会社に払わせようとするものだった。利用者の残高が人質になっている。
GMOが損失を補償すると先に約束したことで、その人質は効きにくくなる。壊されても戻ってくるなら、脅しの材料にならない。「払わない」と「補償する」は、セットで意味がある判断だと思う。
一方で、なぜ情報が持ち出されたのか、どんなセキュリティ上の問題があったのかはまだ書かれていない。それが分からないと、同じ形のサービスを使っている人も安心できない。そこは続報を待つしかない。
まとめ
- GMOはシステムの問題と、情報の持ち出しを認めた
- 見舞金は全員に5,000円。不正な取引の差損と手数料は補償。相場の損や得られたはずの利益は対象外
- 補償の手続きは11月6日までに案内。閲覧専用パスワードを求める偽の連絡に注意
- 攻撃者は70社超の口座への不正注文、情報公開、ランサムウェアで脅している。GMOは応じない
- 能動的サイバー防御は警察が行う措置で、「財産」への重大な危害も条件に入る。ただし決めるのは国
出典
- GMOインターネットグループ・GMOインターネット「お名前.com デスクトップクラウドサービスに対するサイバー攻撃について(第4報)」(2026年10月24日11時50分時点。見舞金、代替サービス、補償、脅迫への方針、政府への要請)
- 同 第3報(2026年10月23日16時10分時点。利用者へのお願い、端末のフルスキャン)
- 内閣官房「サイバー安全保障に関する取組」(サイバー対処能力強化法・同整備法の本文。措置の条件は整備法第2条による警察官職務執行法第6条の2、施行時期は両法の附則による)
本記事は2026年10月24日時点の公式発表と法律の条文に基づく。補償の対象や手続きは、GMOインターネットからの案内(10月30日・11月6日まで)で確認すること。能動的サイバー防御の運用については筆者の確認できた範囲で書いており、政府の判断を示すものではない。本記事は法的・投資上の助言ではない。
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